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最後まで読めます。

テルミーザトゥルー
スピリットバイアス
下巻

マンガ台本
+イメージボード


Tell me the true love. Spirit bias.
イラスト & ストーリー、Tetsuya Morisawa

1987年からあたためました。現在もデータ作成しながらの、私の ささやかな発表会場です。

大切な私の完全フィクションのオリジナル作品です。 先に本編のデータを作成しないでください。
映像にしたいときは直接私に連絡ください。私もいつか作ります。




🔳左から、主要キャラクターの名前と説明

ローザ…地下研究所 支配人(左の人物)
クレス…家庭用万能ロボット試作品
渡瀬綾乃17…優樹の妹、大型バイク乗り、通信制高校2年
渡瀬優樹19…(中央の人物)主人公、工業専門校を辞めたばかり、DTMな人、綾乃の保護者
ウィラ…岩崎のボディガード、最高顧問つき秘書、岩崎邸ホームヘルパー
岩崎慎…NESPHON Inc. 最高顧問 工学博士(アクティブフレイム、スピリットバイアス)
渡瀬直樹…脳科学者(右の人物)


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第六章 「ささやかな希望」


~ 中央公園 ~


十九歳の優樹は ウィラが自分のすべてをさらけ出して
接してくれていると 信じていた

そして彼は ウィラが試着でウェディングドレスをまとった
あの日から いつも 未来の自分と ウィラと
そして 2人のあいだに うまれた子供の姿を
思いうかべていた…

一方、ウィラは どうしても自分の体が「人間のものではない」ということを
優樹に言い出せなかった

彼女は 優樹を失うのが怖かった
岩崎が自分をすてた あの時のように…
だが、ある日何気なく 優樹が 「新しい家族の夢」 を語った そのとき
隠し続けた 真実 は ウィラの胸の奥で
深い悲しみ となって はじけた…


そして… ウィラは その日から 姿を消したのだった…


優樹は困惑した。


博士にたずねると
ボディガードという特殊な職業が 社会の規定に触れ、彼女は解任させられた」
と伝えられた。
また、「ここからあとの話は、できるだけウィラが不利にならないように、社に口添えしておいたが
ウィラとの関係は、終わったと思ってくれ。 彼女がそう言ってたんだよ」

と、冷徹な言葉がかけられた。

博士なりの、出来うることだったのだが…
死んだ目をして外に出ていく優樹。

その晩、優樹は ウィラを探し続けたが
彼女は 見つからなかった。
突き放された本当の理由を知らされない優樹は、一人悩み苦しむ…


ウィラのいない、さびしい食卓。
博士ですら寡黙になってしまっていた。
優樹はごはんの一点を見てる始末。

見かねた綾乃が助け舟を出す。
ねぇ、おにいちゃん、、、あたしと息抜きに買い物いこっか?」







~ ベイサイドエリア ~

ここは、部分的にライトアップされた高架から降りた
巨大ループ橋が見える湾岸線SA…
ウィラは彼女の愛車”ロードウィザード”をとめ
ひとり、車内からベイサイドエリアの連なる明かりを
ただ ぼうとっと眺めていた…

「ここまでくれば…OKか…」 

ズドドドドドド…
ウィザードの、ターボカーならではの重低音が響く

シュィィィィィィ…

常時稼働している燃料ポンプ・プライマリの かすかな作動音
カシュ-…プシュッ…カシュ-…
懸架システムの作動音
フィィィィィィ…
冷却系ファンの作動音…

桜 舞う中、停車中の車体からランダムに発せられるそれらは、
生き物ではない彼らにも、命が宿っているのだと
いやでも感じさせる
そこにいるだけで圧巻だ…



さっきの…彼氏づれの白いヤツ… 腰抜けだったな
並びのパイロンを限界あたりまで目くじら立てて派手に振って縫って…

同型機だったし勘違いされても嫌だから、思わず止めに入ったけど
おっかしい、あの女… 反対に隣で指示するオートマ彼氏のシフトに感応して…
ベイブリッジ出口の高速シケインでわざとノーブレーキかまして
出口でフルロック…
次の高速コーナーでバランス崩して
外周めがけて打ちつけていたけれど…
同じセパレート6駆のクセに あそこで踏めないなんて…

…大丈夫よね…
オートスピンモードに入っていたし、側壁に当てて止めたかな?
きっと 自走で帰れるわ… レッカーもいらないわね…?





あーあ、フロント4輪になって 私、敵がいないわ…

優樹のバイアスにだったら… とてもかなわないけど…

ああ… 私… なぜ子宮も卵巣もないんだろう…
だから、こんなことばかりしているのかもなぁ…


タバコか…また始めよっかな…

もう、どうでもいいけど 優樹… ごめんね?





午前25時…
水平線上に土砂降りの雨が降る…

波を打つ 稲妻…

メーターパネルの明かりは
順々に消えていき
風切り音と豪雨の中
車内 すべては闇の中となった…


キンコン…


漆黒の闇、中央に光がともり
ウィラは ちらりと目線を合わせた

「こんな時に…一体どこからのメール?!」
ウィラは もう 無気力というか …なげやりだ

だが ディスプレイされた文字を見た瞬間
彼女は 恐怖と驚きのあまり 声を失った
そこに示された文字とは……





2人の博士は それぞれの頭脳、「アルテミス」に生前の人格を与え
1人は 次期人類の試作品の義体として研究されていた機械の体を与え 「ウィルヘルミナ」と名づけ、
もう1人は その後アジアで日本が中心となって開発した、究極の再生医療による
不老長寿の生身の身体を与え 「綾乃」と名付けた…

私の名は ローザ
あなたの心からの親友…

私にはあなたの未来が見える…
近い将来、その体内に子宮を持ち、子を宿した幸せなあなたが…




フフフ… はははっ! ははははははっ!!!
一体何???私の心からの親友???
どこの誰よ??ローザなんて知らないわ????
しかも綾乃さんが私と同じ頭脳を持ったサイボーグだっていうの???






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~ 渡瀬邸 地下研究室 ~


優樹が暮らしていた家…
よりによって 1600キロ離れた優樹の家に
ウィラはウィザードの進路をとっていた


脳内に かすかな ささやく声

「とうとうここまで来てしまったね…
 ウィラ カレンズ フォスター…
 もう一人の私…」


すべてを みとおすような、どこか不気味な視線を感じながらも
ウィラは気をとりなおし 渡瀬邸の地下へとアクセルを全開にした



~ 渡瀬邸 ~


カズラのまいた、古い洋館…

「ここが…地下への入り口…
 研究室は地下にあったんだわ…」


ウィラはエレベーターにのっておりてゆく…


「地下150m …」


最下層には 不気味にうねる配管がうごめき
闇の中にうきあがっていた…

背中に冷たいものが流れるのを感じながらも
足をふみいれる ウィラ…

30mほど進むと そこには巨大な空間がひろがって
先ほどの通路の配管がうねっていたが
その配管自体が その空間を形作る
巨大なシステムにつながり
不気味というよりも むしろ 神秘的に見えた…



そして…そのシステムの中央の人影…



「だっ 誰っ?!!」
(ウィラはおびえたように叫んだ)

「私は この空間の頭脳 ”ローザ” …
 こわがらなくてもいいのよ? ウィラ…」

あなたが …ローザ?!」

ローザは優しくほほえむ

「私はあなたに、特別な感情を抱いているの
すっと前から、あなたが生まれる前からね…」



「私は この街全体に 神経をはりめぐらせているわ
 簡単なことよ… 私はすべてを知っているの」

「あなたが私を作った渡瀬博士と岩崎博士の手によって作られた
 ”アルテミス” だということも
 あなたと同時につくられ ここで ”人間” の体と
 記憶をを与えられた綾乃さんのことも…」

「そして… あなたが何故 ここに来たのかも…」

ローザの目から 涙が落ちる

「はっ…?」





「不可能です」





「今の私には… あなたの体を…
 作ることができないのです…」


「1年前…自分の作り出したものが”人間”だった
 ということに 気づいた渡瀬博士は…
 ”それ”が 目覚める直前に プログラムという
 かたちで 過去を与え…
 自分の娘として育てようと思いました…

 そして 博士は…
 作り出した過去を 完全なものにするため
 その作品の…渡瀬綾乃の本当の過去を
 消してしまおうと思いました…

 そのとき…ここにあったデータは
 その ほとんんどが博士の手により
 焼かれ、消されてしまったのです…」

「そ…そんなことって…」

「他に方法は?!
 なにか1つくらいあるはずよ!
 本当は知っているんでしょう?!!」

「ローザ!!!」


「作り出す事は不可能ですが…
 頭脳を入れかえることは可能です…」

「どうゆうこと… 頭脳を入れかえるって
 …まさか!!!」

綾乃の顔が脳裏をかすめる…


全スクリーンに脳を入れ替える手術中の映像。


「そう…試作品 ”綾乃” のアルテミスを排除し
 あなたの頭脳を組み込むのです…!!」


ウィラの恐怖に染まった叫びが
いつのまにか降り出した雨の中に消えていく…








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~ 岩崎邸の玄関前 ~


絶望しきったウィラは
全身雨に打たれていた…

ゆっくり ドアを開けるウィラ…

すると ウィラを待っていたかのように
岩崎博士が立っている…

そして ウィラは博士の思わぬ言葉に
ぼうぜんと立ちつくした…

「優樹君に…おまえの すべてを話した…」

ウィラは絶望のあまり、声も出せない



「わからないのか…
 おまえは”人”ではない ”機械”なんだ」

「もう これ以上… 彼に近づくんじゃない…」

「何故…」

「ウィラ!!」

「何故 あなたが そこまで私に干渉するの?!!」

「私に向かって そんなクチを聞くな!!
 私は おまえを 作り出したんだぞ!!」

「私にむかって…ですって?
 あなたは死んだあのひとを忘れられなくて
 私を作り出しただけじゃない!!!」


「ぐ…」

ウィラは見下した目で 博士 をにらみつけ
その場を立ち去った…







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~ 中央公園 ~


つめたい雨のが降りしきる
真夜中の中央公園…

優樹は 近くの大きな並木道にいた…
彼は 何かにおびえるような目で
ベンチにすわっていた

そして それをみつけたウィラは
一言も声をかけることが できないまま
静かに 彼の前に立った…


「ウィラ… いや、君はウィラじゃない…
 博士から聞いたよ… 本当のウィラは もういないって…」

優樹は ゆっくりと立ち上がった




「でも ウソだろ…? きっと2人して
 オレをからかってるんだろ…?」

「オレにはとても… 君が 作り物だなんて…」

優樹が そう くちにしたとたん、
     ウィラは優樹に くちづけた…」



「これでも… 私が 作られた物だって思うの…?」

鼓動がたかまっている優樹に そっと問いかけた…が…
そのとき ウィラの目には涙があった…

「私が… 作り物だなんて…」

「ウィラ…?」

ウィラは こらえきれなくなり 走り去っていく…
あとを 追いかけることさえできない優樹



「本当はわかっていたんだ… 何もかも…」

「ただ… こわかった だけなんだ…」





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~ ロードウィザード車中 ~


「このままじゃ… 優樹は、私から離れていく…
 …あのひと と 同じように…」

その時、ウィラの脳裏にローザの言葉が響く…
幻覚作用のあるサブリミナル音声だ…!!!



”あなたの頭脳を組み込むのです…”



ウィラの目から ”人” としての光が消えていく…





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~ 岩崎邸 ~

「ウィラさん どうかしたの?」

「ふだんのウィラさんとは ぜんぜんちがうよ?」

「もし、お兄ちゃんのせいだったら
 ちゃんとあやまるように言っておくから…!!」

ウィラは綾乃をキッとにらみつけ
彼女の腹部に こぶしを突き入れた

「…!!!?」

ウィラの腕の中に倒れ込む綾乃
その背後から 銃を持った博士 の怒号

「その子をどうするつもりだ!!!ウィラッ!!!」

「…ウィラ? 一体誰に向かって話しているの?」

「ふざけるなッ!!
その子をどうするつもりだと聞いている!!!」

(ニヤッと笑って)

「ウィラ カレンズ フォスターは死んだわ…
 私はウィラじゃない…あなたの作った ただのデク人形よ?」

「死んだウィラは人間で
 私はあなたに作られた”機械”…
 ウィラと似ても似つかない私から
 あなたはどんどん 離れていったわ…」

「そして 私のすべてを知った優樹も
 あなたと おなじように 遠く離れていく…」

「やめろ ウィラ…」

「あなたが 私なんか作るから…
 私は… 私は誰にも…」

「誰にも愛されないのよォ!!!!!」

「やめろォォォ!!!!!」



そして、一発の銃声が轟いた…



倒れたのは博士 だった…

血まみれの博士 と それを見る 冷ややかな碧眼…

激痛の中、きびすを返し 綾乃を連れ去る足音だけが響く

「あの子を…助けなければ…」

彼の胸から 大量の血が流れ
周囲の床を赤黒く染めていく…

激しい痛みを こらえながら はいずっていく博士…

そして、ほとんどフレームだけのクレスを起動させ
ウィラのあとを追わせるが
鉄のにおいのする血だまりに横たわり
彼は確かにこう言った…

「ウィラを……」


「お父さんッ!!!!!」


「…最終命令文だ……クレス…」





「 ” ウィラを…殺せ ” 」







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第七章 「 心ゆらして 」


~ 中央公園 ~


初めて ウィラと出会った時のこと…
ウィラに初めて 話しかけたこと…
それから…彼女が 真夜中のガレージに
夜食を作って 持ってきてくれたこと…

つぎつぎと… 彼女との思い出が 優樹に流れていく…



「ウィラ…」

さらに 切ない思い出は加速していき
ウィラは優樹に はにかんでみせる

「いろいろあるけど、よろしくね…?」


「ウィラは いつも そばにいてくれた…」

気づくと 優樹のほほには涙がつたっていた…

「そして…オレは… 今でもウィラを……」







蒼い影を背に 彼は歩きはじめた…







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~ 岩崎邸 ~


「ウィラッ!!」
一刻もはやく 優樹は自分の気持ちを伝え、
彼女の心を助けるために
ウィラを探していた

2階に上ってみると
廊下に血だまりの後がつづいている…

奥で血まみれの博士を見つける

「博士!!?」

「一体誰がこんな……」
(あまりの出血に優樹は気が動転している)

「……優樹…君… ウィラが…
 綾乃さんを連れ去ってしまった…

 おそらく…あの子…は… 綾乃さんの体を解体して
 人間…として 生まれ変わるつもり…だ…

 …優樹君…君の為に……」

「!!!」



「さっき… クレスに後を追わ…せた…
 ウィラはもう… 生きて…は…帰らな…いだろう」

博士 は血を吐く… そして命をかけた彼の最後通告

「…ウィラは…私のものだ…
 だが…あの子は日々変わっていってしまった…」


「老い行く私が悪いのか… 2度目の人生で
 人を深く知る中で…、内面がいつのまにか醜く変わっていっ
 てしまったのかは…わから…ないが…」

「あの…子…は生まれてきて…は…
 いけな…かっ…た……の…か」




岩崎の鼓動は、いつのまにかとまっていた…




「うおぉぉおぉぉぉおおおおおおおおおおッ!!!!!
 博士!!あなたは何故、わからなかったんだ!!


優樹は怒りに震えるが、それは岩崎へのものだった
いきなり優樹は死んだ岩崎の胸ぐらをつかみ、叫んだ

「勝手に生き返らせてそりゃねぇぜ!
 あなたが あのとき オヤジと作り出したもの自体
 ”人間” だったって認めろォ!!!
 ウィラは人間だ!!!ウィラはにんげんなんだァァァア!!!!」

 勝手に経過観察材料としちまっただけで嫌になるぜ
 冷たすぎたんだよ!!!

すかさず両手でつかんだ胸ぐらを心臓に叩きこむ!!

「生き返れ!!!生き返れ!!!生き返れ!!!うらぁ!!!畜生ォオ!!!!!
 おまえは生き返って死ぬほどウィラに謝るんだァァァァァァァッァアアアアアアア!!!」

ドクッ!!!
ドッドッドッド!!!!!!

蘇生した博士の心音は、優樹の悲鳴をかき消した
(そせい=生き返る。 蘇生した=生き返った。)

おまえが最後まで優しくすりゃそれでよかったんだ!!!」


~ 岩崎邸ガレージ ~


Voice Print Confermation...
声紋確認…

Main Trans Engine #1 ON... #2 ON...
メインエンジン 1番、2番、始動

Drive C, Stand By...
機体データ、読み込み開始

System All Not Green...
全システム、不調のまま

" [Sword Bias] ...Stand By..."
ソードバイアス スタンバイ

ズバァン!!!!ゴアァァァアアアアアアアアアア!!!!!!!


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!



轟音の中、キリキリキリとガレージの扉が開きだす…








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第八章 「 天使になれ 」


~ 東名高速道路下り ~


[ DANGER SPEED!!! WHY KILL ME!!? ]

突然のソードバイアスの悲鳴…

竜巻の中 優樹は首を振り飛ばし、振り返る

「こんな時に…」

優樹のはるか後方に 3機の無人パトロールポッドが…

「逃げ切れるか…?」

” Guilty Voost Stand By... ”
(ギルティブースト スタンバイ…)

優樹はスロットルを 大きくひねった
ソードバイアスの4機のエンジンが 4発同時に轟音をあげる…

「カナードだろうが何だろうが吹き飛んでしまえッ!!!」

全身を被うカウルが、
突き出た各部に突き刺さる風圧で骨格から引きちぎられ
悲鳴を上げる…


「うぉおぉおおおおおおおッッ!!!!!」

エンジンまわりのちぎれた血管から飛び散る血液…
漆黒に染まってギラつくフレーム…

轟音をまとい 爆炎に突き刺さる 銀のつるぎ…

突き抜けるソードバイアス…

それは… まるで疾風の如く…

震える炎の中に…



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~地下研究所~


クレスは ウィラの心に変化があった事など無視し
岩崎博士の命令通り ウィラを殺しにかかった…

クレスによって 弾丸を 1つ1つ 撃ち込まれるウィラ…


「この子は 本気で 私を殺すつもりなんだ…」
もうろうとした 意識の中 ウィラは思った

”ローザ” のメインコントロールパネルに
 叩きつけられるウィラ…



と、その時そのショックで ”ローザ” が暴走をはじめ
スーパーコンピューター ”ローザ” は真の姿をさらけ出す!!
うつぶせに倒れたウィラからは うすい煙がたち
体にはエネルギーが 静電気のように走っている…


と…その時!!!
一体何が起こったのかわからず
ただ ぼうっと空を見るウィラの頭脳に
ささやくような 笑い声が響いた…

「クククククッ…」
「だっ 誰?!」

突然の声に ウィラは辺りを見回すが 誰の姿も…ない…

だが… この閉ざされた空間には 確かに
”憎しみに満ちた 何か” がいるのだ


蒼いドレスを着た女性の3D映像が浮かび上がる…

「ククク… ウィラ カレンズ フォスター… もう1人の私…

「!!」

「あ、あなたまさか…」

「そう… 私はローザ…」

「あなたたちの 試作品…
 あなたたちを 作り出すためだけに産まれた…
 ただの試作品よ…」


「私は生まれた…
 この… 暗い 閉ざされた空間に…
 私はこの世のすべてと アクセスできる…
 この世を自在に動かせる…」

「月に浮かぶ 私たち人類の頭脳墓地…ムーンベースだって思いのまま…」

「私は この世のすべてを動かせるの…」



「 すべては 私の思うまま…」

「私は ”私” に ”神” を見た…
 あなたたちが 現れる前までは…」

激高するローザ

「あなたたちは何?! 私と同じ ”機械” でありながら
 生まれてすぐに体を与えられて
 人間とかわらない 自由な生活をしている…」

「それなのに… 私は… 私だけが…
 こんな 暗い地下で 眠りつづけている…」

「私は あなたたちが憎い…
 こんなにも つらい気持ちをあじあわせた…
 あなたたちが……!!!!」


~ 研究所前 ~


渡瀬の研究所前に不時着し、路面を滑走するソードバイアス

アスファルトに叩きつけられ、 バラまかれる宝石のようなカスタムパーツたち…

「最後まで 大事に したかった…」

” Save The Our Configration... ”

きしむ肩から引き下がった 墨の入った義手の皮を引き裂き
燃えさかる彼の心臓に叩き落とした


流れ出た 燃料に 引火する…
炎上するソードバイアス…

轟音と爆炎を背に 血みどろの優樹は
ソードに「サヨナラ」を言った

舞い散る 炎のまっただ中
それでも震える両足を引きずっていく

優樹の首には
彼の形見のソード・キーが 鈍い光を放っていた





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~ 地下研究所 ~


” EMERGENCY ”

せりあがる中央工作ユニット


そして システムのまわりでうねっていた
エネルギーが束になり、 瞬間、いかずちとなって金属製の足場を打った…!

役目を終えたクレスは一気に大きな金属製の足場ごと地中深く叩きこまれた



中央工作ユニットをそびえ立たせる最下層のプラントから出た火が、
爆炎となって暴れまわる…

ギシッ…ギシッ…ギシッ…
(金属のかみ合う にぶい音がする…)
恐怖に顔をひきつらせ 吹きあがる炎から後ずさりするウィラ…
すると、体長2メートルはあるかという化け物が 縦穴からゆらりと立ち上がる…

ローザ の顔は恐ろしく変わっていた…


「可愛いでしょう…  私の…子供よ?私一人で作ってみたの」

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優樹はボロボロの体をひきずっていた…
必死の思いで 地下へ…



そして 最後に 胸へ撃ち込まれ意識が途切れる瞬間
ウィラの目に映ったものは
全血まみれになり、やっとの思いでここまで
たどりついた優樹の姿だった…


ウィラは 目に涙を浮かべて 音もなくたおれていく…
体長2メートルはありそうな骸骨の化け物に心臓部を貫かれたのだった…
跳ねるように外壁サーバーブロックへその身を打ち捨てる骸骨

かけよった優樹はあまりのむごさと絶望のあまり
何が何だか分からなくなっている…

ウィラの体を静かに 横たえる…


「ウィラッ!!!」

「ウィラッ!! ウィラッ!!!」

優樹はただひたすら 彼女の名を叫ぶ…





…真っ白なウェディングドレスを着て 微笑むウィラ……

彼の目には涙があふれかえり、ウィラのほほをつたった…


「……嘘だろ?」


どんなに彼が 声をからしても…
彼女の目が それから 2度と開くことはなかった…



優樹の心は 絶望から やがて怒りにかに変わっていく…


「うおぉぉおおおおッ!!!」

優樹はウィラを殺した骸骨に殴りかかる
彼の肩を 骸骨の爪がつらぬくが
それでも骸骨の頭蓋の眼を殴り潰した

そして、彼は義手が潰れても殴り続け
主要器官を引きちぎった…

…原型がわからなくなる骸骨…

「うぁぁああッ!!」

優樹は ガクっとヒザをついた…








第九章 「 決して… 振り返ることなく 」


僕は ここに 生きる…
君が 生涯を生き、 のぼっていくまで…



いくども歩いた並木道…
3人づれの若い家族が 仲良さそうに歩いている…



優樹と 綾乃と その2人のあいだの子供である


綾乃がかがみこんで 子供と楽しそうに話している…

そして、タバコを吸うため少し離れた場所に立つ優樹



すうっと、彼の横に立つ人影…
優樹が振り返ると そこにはウィラがいた

あの時と同じように…



「私はオリジナルのウィルヘルミナ
 母国で ” あなたたちとの恋の夢 ” を見ながら
 病気が治るまでコールドスリープしていたの」

「夢はかなったようね?」

ウィルヘルミナは はにかんで見せた

「あぁ」

「こっちもね、一度死んだショックで部分的に記憶を失っていた慎が
 渡瀬博士の尽力で、やっとわたしのことを思い出してくれたの」

「父さんの力で?」

「えぇ」

そう言うとウィルヘルミナは
こもれびの雑踏の中に消えていった…
雑踏=にぎわい



「ありがとう...ウィルヘルミナ」

彼は 静かにつぶやいた


「どうしたの?」

あやのが不思議そうに言う


「また いいことがあったよ
 信じられない事だけどさ…」


優樹は 優しく微笑んだ





そして、 こもれびのなか 3人は帰っていく……

決して… 振り返ることなく…














TELL ME THE TRUE LOVE.
Spirit Bias.....

Fin....













森澤哲也ⒸTetsuya Morisawa.










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